論文「日本の中古住宅が売れない理由」


「日本の中古住宅が売れない理由」

 

倉田 剛

 

2018123日付の日本経済新聞(夕刊)に、「中古住宅なぜ売れない」といった論説が掲載された。その中では、中古住宅が売れないのは、「品質と価格の透明性がカギ」だと結論されている。

また、2019年の消費増税による消費低迷を懸念した政策が議論されている折、高額な買物ともいうべき住宅取得に対しても、この際、割安な中古住宅に消費者が目を向ける好機だとも指摘されている。

世界的比較においても、高額な日本の住宅価格と、極めて短命な住宅寿命とのギャップ(矛盾)の要因は、まさに品質と価格にある。日本の住宅は、海外に比べて途中のメンテナンスがそもそも最初から想定されていない、住宅価格についても極めて不透明である。だから、建築後20年経過した中古住宅の場合は、その売買取引ではほぼゼロ評価とするのが慣習的となっている。中古住宅ストックを購入するにも、中古建物の評価額が低く抑えられている点も資金調達の隘路となって取引件数を減じている。

しかし日本人が「中古住宅を買わない理由」は他にもある。まず日本人の消費性向として、“新しいもの好き”があり、また「せっかち(性急)」な日本人気質があり、したがって「買い替え志向」が強い点は無視できない。中古住宅を購入して、住みながらリノベーションするなどは面倒くさい、それならいっそ新築住宅の方が手っ取り早い、そうした気風がある。また建設業者や金融機関の営業担当者は、顧客のこうした性向を熟知しているから、最初から新築の方を勧めるケースが圧倒的に多くなる。 

また、日本家屋の構造的特性も関係している。日本の木造住宅では軸組工法が一般的であり、耐震壁の必要性からおのずと大規模な改造は制限的となっている。最近普及しているパネル工法であったとしても同じことが言える。いまひとつ、住宅区画(土地)の狭小性が、既存住宅の購入意欲を削いでいる点も無視できない。

その他に、インフラなど立地条件の変化が中古住宅ストックの増加と因果関係が指摘される。人口減少の地方自治体にみられる不可解な市街化区域の拡張も問題視されるべきだ。

もちろん新築有利な現行の税制や何度も課税される消費税、不合理な減価償却規定などの影響については改めて説明を要しない。

 

朝日新聞社(1110日付)が行った調査結果によると、

1、持家派が87%、賃貸住宅派が13%。「持家が理想」と答えたうち、60代が29%で最多、5026%、7023%と続く。

2、家賃と違って、ローンを返済すれば資産(持家)になる。

3、年金生活だと家賃の負担が重荷。

4、高齢者は、賃借することが難しい。

5、持家も、長く住んでいると老朽化で修繕費などの負担が大きい。

6.マンションは、管理修繕費が増える傾向にあり、退職後はさらに老朽化も進む。

7、マンションは、借り手がない空き家であっても管理修繕費の負担がある。

8、マンションは、大規模修繕や建て替えなど難しい問題がある。

9、相次ぐ災害に、持家から賃貸へと住み替えを考える人が増えてきている。

10、災害時でも、気楽に転居できる賃貸の方が気楽と考える人が増えてきている。

 

前述の調査の回答から、「住宅を選ぶポイント」を次のような条件と順位に整理できる。

1、公共交通機関へのアクセス―――立地条件

2、価格やコスト―――――――――価格条件

3、陽当たり(日照)―――――――構造条件

4、生活スペースの広さ――――――構造条件

5、周辺の商業施設――――――――立地条件

6、周辺の医療・介護施設―――――立地条件

7、周囲の騒音――――――――――立地条件

8、周辺の住民――――――――――立地条件

9、収納スペースの広さ――――――構造条件

10、緑や自然環境の豊かさ―――――立地条件

 

上記からしても、売れる中古住宅の最大のポイントが立地条件(ロケーション)にあることは確かだ。

 

 

総務省資料によると、日本の2013年の〈持家率〉は61.7%、一方、〈空き家率〉は年々上昇して、過去最高の13.5%となっている。また空き家が増えている地域であっても、若者は、空き家よりも、“新たに開発された場所”の〈新築・小住宅〉の方を好む傾向が強い。

家族の少人数化と核家族化とが相俟って、大き目の家は不経済とされ、マンション・サイズの戸建住宅とも評されるような「小住宅」が好まれるようだ。

 


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