2019年8月マンスリーレポート


Monthly Report 2019-08         

                            

           特定非営利活動法人リバースモーゲージ推進機構

理事長 倉田 剛

 

■ 墓地の契約は先人の知恵

 

 

先日、久し振りに、以前ご近所付き合いをしていた仏壇店を訪ねた。80代のご夫婦は、相変わらず元気な様子で店に立っていた。お二人は、大型の仏壇が売れなくて、売れるのはマンション向けのミニサイズばかり、店の売上は落ちる一方と嘆いていた。お二人が現在のお店を開業してから50年余経過している。その間に、不動産バブルと崩壊をみてきた。80年代の不動産好況期には、仏壇店も堅調、お二人は近所の売り物件を買い漁り、店舗兼自宅の他に5か所の不動産を保有している。その長期不動産ローンも最近完済したのだが、すでにその周辺はシャッター通りに変貌して、不動産価格は急落、購入価格を大きく割り込んでいる。

大型の仏壇はどちらかといえば戸建住宅向きであり、ミニサイズの仏壇はマンション向きである。その需要の逆転は、戸建住宅の世帯にはすでに仏壇がある、沼津市中心部は大型店舗が撤退し、その跡地にはマンションが新築されている、だからミニサイズの仏壇の需要はマンション住民が増えてきているから、とも解釈できる。大型の仏壇のサイズダウンの依頼は安定的にあるという話からすると、戸建住宅からマンションへ住み替えるシニア層が増えているのかな、そう考えながら聞いていた。

 

次に、近くの菩提寺に向かった。

毎年、墓参の度に気付くのだが、墓石が撤去された空き墓地が増えている。旧市街地に空き家や空き地が増えているのと似ている。住職の話

 

によると、連絡が取れない墓地の主が着実に増えているらしい。この現象も、所有者不明地が増え続けている不動産事情とよく似ている。

最近の科学技術の急進は、死者と遺族の空間的距離感まで変化させている。墓地も、都市集中化とコンパクト化は当たり前、ビルの一角に小さな位牌となって納まっていて、受付でパスワードを入力すると位牌が目の前に現れる仕掛けはもう旧モデルだ。自宅のパソコンにパスワードを入力すれば、いつ何時でも画面に位牌や故人の顔が出てくるデジタル墓地もあるようだ。葬儀の方も多様化して、散骨は当たり前、樹木葬もあるし、家族葬の他に仲間葬もあるらしい。たとえば、「協住の家」の場合を想定した時、墓地は世帯員全員の共同墓地で仲間葬となるのだろうか。

死生観も多様化すれば宗派の垣根もやがてなくなる。現に、ペットと一緒に埋葬される墓地もある。これも祭祀の多様化と家族観の変化であり、生命保険商品のバリエーションにも如実に反映されている。

墓地事情の変貌にも、人口減少、核家族化、家族の縮小、超高齢化、地方の衰退等々のすべての社会現象が、直接的、間接的に影響している。聞くところによると、空き墓地が増えているのは、子供の近くに墓地を買い替えるから、墓地の維持管理の負担を子どもに負わせたくない親が永代供養の共同墓地に移すからとか。

しかし、こうした世相は、檀家の供養や法事を、代々執り行ってきた寺にしたら想定外の事態であり、寺の存続の危機ともなる。

墓地は、宗教法人の排他的、独占的な権利下で護られている不動産(土地)である。その墓地を購入する行為は、墓地の使用権の購入であり、墓石は檀家の所有権となる。墓地の場合は、管理費などを一定期間滞納すると、まず使用権の解約条件となり、お骨は共同墓地に移され、墓石は廃棄処分される。墓地の契約は、限られた墓地を使用権に限定して効率性を安定化させ、使用料の滞納を解約条件にして循環性(収益性)の悪化を防ぐ取り決めであり、寺の存続を期した経営戦略であり、先人の知恵とも理解できる。

墓地の契約を住宅に敷衍して考えてみると、家屋は、一定期間の租税滞納や悪質な管理義務違反などで解体処分され、と同時に土地の使用権も失うことになる。家族は、その家屋を相続できるが、相続放棄すれば土地の使用権も消滅する。この場合の相続放棄の効果は他の財産には及ばない。その土地が私有地ではなくて公有地ならば、この仕組みの安定性や継続性は担保され、定着する。

親の家に、子どもが同居し続けられるためには、子どもの収入源が将来的にも確保できる点、その家族のための教育インフラと交通インフラが整備されている点、そして自然災害の不安がない点などが必要条件となる。これらの生活基盤に問題がある地域には、子ども世代は生活できない。親の実家が空き家のまま残っているといった話はよく耳にするが、空き家であっても租税負担や管理責任は相続人に及ぶ。親の家の土地が、定期所有権や使用権ならば、この種の問題は軽減するか、解消する。

 

2018年の日本人の平均寿命は、男81.25歳、女87.32歳、ともに過去最高を更新した。しかい長寿化とともに認知症有病率の方も高まって、80代後半では4割、90代に入ると約6割が認知症となっている。すなわち自立生活能力に問題がある高齢者数が確実に増えてくる。また、血縁の家族に頼らない、あるいは頼れない高齢者も必ず増えてくる。血縁ではないが気心の知れた人たちと家族のように協同生活をする「協住の家」の暮らし方に共感する高齢者も、今後は増えてくるに違いない。しかし「協住の家」に移り住もうとする際、ネックとなるのは、それまで住んでいた持家の処分である。

持家高齢者の単身世帯が増えてきていることから、相続されない持家の場合に限って、土地の所有権を、家屋の解体を以って消滅する使用権に変更できる選択肢があれば、高齢者の持家の流動性は大幅に改善されるし、新しいタイプのリバースモーゲージの萌芽にもつながる。

100歳にも届きそうな長い人生を想像したとき、死は必ずしも哀しいことではなくなる。不謹慎な言い様を許してもらえるならば、死は、認知症からの離脱となり、介護家族にとっては長い介護の終焉となるからだ。

 

 

お知らせ 

『ほっと会の「協住の家」研修会』

 この度、藤枝市の認知症介護家族の会「ほっと会」(世話人:西山美紀子会員)は、「協住の家」の具現化に向けた最初の取り組みとして、表記の研修会を開催する。

8月7日には、「協住の家」研修会に、ふじのくに未来財団から助成金が授与される。

「研修会の概要」

開催期間——令和1年9月~23

開催場所——藤枝市内、会場(未定)

受講対象——ほっと会メンバー、一般人

受講受付——8月下旬予定

主催者———藤枝・ほっと会(西山、杉山)

協賛団体

NPO法人リバースモーゲージ推進機構

・ふじのくに未来財団

後援———藤枝市、藤枝市社会福祉協議会


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